スキップフロアとは|メリット・デメリットや後悔を防ぐためのポイントまで実例付きで解説
床の高さが部分的にずらされたスキップフロアは、間取りにメリハリを与えるために効果的な要素です。
しかし、実際に採用する場合には、メリットだけでなくデメリットも考慮し、慎重に検討する必要があります。
そこで本記事では、スキップフロアとは何か解説するとともに、メリット・デメリットや、後悔しないためのポイントまで解説します。
コラムのポイント |
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・スキップフロアとは、同じフロアの中で床の高さを段階的に変化させ、縦方向に空間を活用する手法です。 ・スキップフロアは段差によって空間を仕切るため、連続性と開放感を演出できます。 ・構造が複雑になり、優れた設計力と技術が求められるので、施工実績の豊富な業者に依頼しましょう。 |
Contents
スキップフロアとは
スキップフロアは、1つのフロアに高さの異なるフロアを設けた間取りです。
「ステップフロア」とも呼ばれており、部分的に床の高さを変えて短い階段で接続することで、空間に高低差を生み出します。
立体感を出すことによって、壁で仕切らずとも空間をゾーニングでき、作業スペースや収納スペースなどさまざまな用途に活用可能です。
スキップフロアを間取りに取り入れる5つのメリット
スキップフロアを取り入れることによって、次の5つのメリットがあります。
空間を有効活用できる
スキップフロアを取り入れることで、限られたスペースを最大限に活用できるのは大きなメリットです。
2階建て住宅の場合、1階と2階との間にデッドスペースが生じやすいですが、スキップフロアを採用すれば使用可能面積を増やすことができます。
居住面積を削ることなく、作業スペースや収納スペース、趣味のスペースなどを追加できるため、ゆとりのある住まいが手に入ります。
明るく開放的な雰囲気になる
スキップフロアは、空間の連続性を保ちながらゾーニングできるため、開放感を確保したい場合にはぴったりです。
壁やドアなどの仕切りではなく、床の高低差によって緩やかに空間を区切ることで、広々と開放的な印象をもたらします。
高さがあることによって視線が縦に抜けるため、実際の床面積よりも広がりがあるように演出可能です。
家族の気配を感じやすい
スキップフロアは、高さが異なりつつもワンフロアの空間のため、家族同士の気配を感じやすい点も特徴です。
例えば、リビングで過ごす方とスキップフロアの書斎スペースで過ごす方がいた場合、適度な距離感は保ちながらも、お互いに気配を感じることができます。
壁やドアで仕切られていないため、コミュニケーションも遮られません。
小さなお子さまの様子も確認しやすく、子育て世帯にもおすすめの間取りです。
収納スペースを設置できる
スキップフロアの段差部分や階段下を、収納として活用できる点も大きなメリットです。
段差部分の引き出し収納、階段下収納、高さを利用したクローゼットの設置など、さまざまな方法で収納スペースを確保できます。
デッドスペースを有効活用しながら収納不足を解消したい場合、スキップフロアはおすすめの間取りです。
床面積を増やせる
スキップフロアを設ける場合、天井高が1.4m以下であるなどの条件を満たすことによって、床面積に算入されません。
床面積はそのままのため、固定資産税に影響を及ぼすことなく、実質的な使用可能面積を増やすことができます。
しかし、各自治体によって算定条件は異なるため、施工業者へ事前に相談しましょう。
スキップフロアはやめたほうがいいのか|注意したい4つのデメリット
スキップフロアにはさまざまなメリットがありますが、「スキップフロアはやめたほうがいい」という声も見られます。
ここからは、注意しておきたい4つのデメリットについて確認しておきましょう。
段差や階段が多く上り下りが大変
スキップフロアを設ける場合、1つのフロアに複数の段差や階段が生じることになるため、上り下りに苦労する恐れがあります。
若い世帯であれば無理なく移動できる一方で、ご高齢の方がいる世帯・身体の不自由な方がいる世帯にとっては、移動が難しくなることも少なくありません。
また、小さなお子さまがいるご家庭の場合、段差や階段で転倒するリスクも考えられます。
将来的なバリアフリー設計の必要性や安全対策について、十分に考慮した上で設置しましょう。
建築コストが高くなる傾向がある
スキップフロアは、間仕切り壁を設置せず、段差や階段を取り入れることでゾーニングするため、耐震性の確保が難しくなります。
十分な耐震性を確保するには、より高度な構造計算が欠かせません。
そのため、スキップフロアのない家よりも設計費用が高くなる傾向にあります。
また、実質的な床面積が増えることによる材料の増加、配管・配線工事などの複雑化により、工事費用が高くなりやすい点にも注意しましょう。
冷暖房の効率が悪くなる恐れがある
スキップフロアは、間仕切りを設置しないことで開放感を演出できますが、冷暖房の効率には注意が必要です。
1つのフロアを立体的に有効活用するため、空間が広くなり、「冷房をつけても部屋がなかなか冷えない」「暖房をつけているのに寒い」といった状況になる恐れがあります。
冷暖房効率の低下と光熱費の増加を防ぐためには、適切な空調計画を立てるほか、断熱性能の優れた作りとすることが欠かせません。
設計・建築の難易度が高い
スキップフロアを採用する場合、段差や階段が増えることによって構造が複雑化するため、設計・建築の難易度は高くなります。
壁を設けずに構造的な安全性を確保し、なおかつデザインも優れた仕上がりにするには、高度な専門性や技術が不可欠です。
スキップフロアの施工実績が十分でない業者に依頼すると、使い勝手が悪かったり、安全性に不安が生じる恐れもあるため注意しましょう。
スキップフロアを取り入れて後悔しないためのポイント
「スキップフロアにしなければよかった」と後悔しないために、次にあげる3つのポイントを押さえておきましょう。
老後や掃除・移動の手間を考慮する
スキップフロアを採用するとなると、段差や階段が増えるため、老後の身体機能の変化まで見据えて設計することが重要です。
手すりを設置する、段差は低く緩やかにするなどの工夫を凝らすことで、老後の転倒リスクを抑えましょう。
また、スキップフロアを設けることによって、掃除の手間が増える恐れもあります。
掃除機の持ち運びが面倒な場合は、軽量のコードレス掃除機などをフロアに用意し、負担を軽減するのもおすすめです。
往復する機会の多い生活動線上・家事動線上にスキップフロアを設けるのは避けるなど、間取りの工夫も欠かせません。
家具の配置や収納スペースについて事前にシミュレーションする
スキップフロアを設ける場合、空間が特殊な構成となるため、家具の配置や収納については事前に計画を立てておきましょう。
スキップフロアの階下や段差を収納として活用できる一方、段差があることで家具の配置に制約が生じるケースもあります。
シミュレーションソフトを使って計画を立て、実際の生活動線や使い勝手に問題はないか検証しておくと安心です。
奥行きや高さなども考慮し、デッドスペースが生まれないか確認しておくこともおすすめします。
空調計画を綿密に行う
スキップフロアは、空間を広く活用することによって冷暖房の効率が下がりやすいため、空調計画を綿密に行う必要があります。
- ・冷暖房を適切な位置に設置する
- ・床暖房を設置して足元から暖める
- ・シーリングファンやサーキュレーターで空気の循環を促進する
- ・高気密・高断熱仕様の住宅にして外気の影響を抑制する
- ・断熱性能の高い窓ガラスを使用して窓からの熱の出入りを抑える
- ・窓の配置や天井高を工夫する
上記のような対策をとることで、空調効率を高めましょう。
スキップフロアの施工実例
実際にリョーエンホームが手がけたスキップフロアの施工実例を紹介します。
スキップフロアをどのように取り入れるかお悩みの方は、ぜひ参考になさってください。
スキップフロアの施工実例①1階から2階までのデッドスペースを有効活用
リビングから2階へと続く階段の途中にスキップフロアを設けた実例です。
お子さまのスタディスペースや、ちょっとした作業スペースとして便利なフロアに仕上げました。
フロア下は収納としてもくつろぎスペースとしても活用できるように、柔軟性の高い空間となっています。
スキップフロアの施工実例②広々と開放的なスタディスペースを実現
リビングの一角にある畳の小上がりスペースから、広々としたスキップフロアが続いています。
スタディスペースとして活用することを想定し、棚を設置して収納力も十分に確保しました。
キッチンの向かいに設けることで、お子さまの様子を確認しやすいのが安心できるポイントです。
スキップフロアの施工実例③家族とのつながりを感じる半円型のスキップフロア
広々と開放的なLDKを見下ろすように、半円型のスキップフロアを設置した実例です。
スキップフロアの横には一段下がったサンクンリビングも設け、家族が集まる団らんの場に仕上げました。
まとめ
スキップフロアを取り入れることで、延床面積はそのままに、実質的な使用可能面積を増やすことができます。
お子さまのスタディスペースや趣味のスペース、収納スペースなど、用途が幅広い点も魅力です。
しかし、階段や段差を設けた特殊な構造となるため、安全性とデザイン性を確保するためには、優れた設計力や施工技術が欠かせません。
スキップフロアを採用する際には、信頼できる施工業者に相談し、家族構成や用途に合わせたレイアウトにしましょう。